「客先常駐は地獄。」
「やめたい。」
「奴隷と変わらない。」
こんなネガティブなワードを、ネット上で見た経験があるのではないでしょうか?
最近、ブログなどで客先常駐の話題を発信する人が増えています。
中身をみると、客先常駐から転職してハッピーになったという内容が多いです。
一方、客先常駐のポジティブな面を扱っているページも結構な数があります。
「どれが客先常駐の真実?」と思う方もいるでしょう。
そんな方に向けて、客先常駐歴5年の私が実体験をもとに本記事を執筆しました。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
客先常駐SESが「やばい・地獄」と言われる理由とは?

「やばい・地獄」の理由を一言で表現すると、「環境次第で命運が変わる」です。人間はおのおの特性を持ち合わせ、得意・不得意や人との相性があります。
自分の性格や特性、スキルに合った現場に配属されれば、そのままスキルアップが可能です。結果、市場価値が高いエンジニアに成長できます。
しかし、必ずしも自分にマッチした現場に配属されるとは限りません。
むしろ、配属されない方が多いでしょう。
自分に合った環境で働ければ、客先常駐を「やばい・地獄」とは言わないでしょう。逆も同じで、相性が悪ければその人にとっては最悪な働き方です。
ネット上でネガティブな評判だけではなく、ポジティブ評判もあるのはそのためです。
ここでは、多くの人が【比較的共通して】客先常駐SES「やばい・地獄」と感じている理由をご説明します。
労働環境を自分で選べない
客先常駐は自分で案件を選べないので、スキルアップできるかは運次第のところもあります。よく言われている「案件ガチャ」です。
自分と相性の悪い職場だと、仕事が思うようにできずに社員との関係を壊してしまいます。
結果、人間関係が悪い現場でずっと耐えなくてはいけません。
現場を変えるように頼んでも、総じて要求は通らないです。
上流工程が経験できない
プログラミングを経験できる場合はありますが、上流工程はほとんどが常駐先の社員(プロパー)が担当します。
業界特有の多重下請け構造で、SESは下の業務を担当することが多いです。
参照 : IT業界の仕組みと偽装請負の闇を分かりやすく解説しよう:「多重下請け+客先常駐+偽装請負」のコンボで業火に包まれるな(1/3 ページ) – @IT (atmarkit.co.jp)
また、SESには納品義務がなくプロパーから指示されたことをやるだけで、
仕事が作業的なもの中心になりやすいです。
結果、上流工程が経験できずに市場価値が上がりません。
プログラミングだけでIT業界で生き残っていくには限界があります。
多くの人が35歳ぐらいを前に転職を考えはじめます。
雇用が安定しない(正社員でも簡単に職を失う)
客先常駐は、自社でエンジニアを雇用して客先におくることで利益を得ています。
つまり、エンジニアが入れる案件がなくなるとマイナスということです。
とくに、年齢があがると常駐先がなくなる可能性が高くなります。
年齢とスキルのバランスが崩れはじめるからです。
その傾向が出始めるのは、20代後半から30代。
ちょうど、管理的な仕事を担当しはじめる年代です。
客先常駐はプロパー社員から指示された業務を行うのが基本。
そのため、仕事が作業的で顧客折衝(要件定義)やプロジェクト管理(PM)を経験できない場合が多いです。
繰り返しますが、開発の上流工程が経験できない環境にいると、年齢に比例して行き場をなくしていきます。
実感から言って、40代以上からは本当に案件が少ないです。
案件がなくなれば、正社員であっても簡単に職を失います。
経歴詐称をする会社がある
現場にエンジニアを送るために、経歴を詐称する会社は結構あります。
詳しくはSESの闇エピソードをご参照ください。
その状態で現場に入っても、仕事は長続きしないでしょう。
「経歴の割に使えない。」
冷ややかな視線に耐えながら業務を行わなければいけません。
給料が低い
客先常駐は、給料の低さが問題になっています。
給料が低い・上がらない理由は、仲介会社と自社からのピンハネです。
たとえスキルがついて単価が上がっても、ピンハネする額を増やして調整します。
とくに、単価が高いベテランエンジニアからの搾取は酷いです。
結果、何年働いてもほとんど昇給せず、40代に入ると年収の限界がきます。
とくに、自社からのピンハネ率は非常に高いです。
生活に余裕がないエンジニアの悩みはよく聞きます。
客先常駐SESのメリット・デメリット

客先常駐のメリット・デメリットは人によって差があります。
ある人にとってはメリットだと思うものも、他の人はデメリットに感じる場合があるからです。そのように言ってしまうと元も子もないですが、比較的共通していることは存在します。
ここでは、【多くの人が共感している】客先常駐のメリット・デメリットを紹介します。
客先常駐SESのメリット
幅広く業務を経験でき人脈が広がる
客先常駐は1つの現場にとどまらず、多くのプロジェクト先を渡り歩きます。
そのため、対応可能な業務の幅が広がります。
色々な職場のノウハウも学べるので、今後に生かせるでしょう。
さらに、人脈が広がるのでさまざまな価値観を学べ、横のつながりもできます。
人生のチャンスが大きく広がる可能性はあります。
仕事のプレッシャーに強くなれる
客先に入って仕事をするので、緊張感は常にあります。
自社を代表してプロジェクトに入っているので、責任は大きいです。
緊張感がある中で、パフォーマンスを発揮するのは難しいので、
案件をやり遂げれば大きな成長につながります。
開発現場では、常駐先の社員として対応しなくはいけません。
例えば、大手企業の○○に配属された場合、クライアント対応する時は「大手企業○○の佐藤と申します。」と名乗る必要があります。
客先常駐は有名で大きな会社に常駐する場合が多いです。
世間的な信用が高い分、失敗すると厳しい態度をとられるでしょう。
「大手企業○○の社員なのにこんなことも分からないの?」みたいなニュアンスで批判されることはザラです。
すぐに退職しなければ確実に精神的には成長できます。
未経験でも入社しやすい
SES企業は未経験でも入社しやすいです。
案件の数だけ人が欲しいからです。
- 業界経験や実務経験が積める。
- 現場で使用しているツールの使用法が分かる。
- システム開発の流れが分かる。
一例ですが、未経験でも以上のようなメリットがあります。
20代や年齢に見合った経験を持った30代・40代であれば、案件が豊富で客先常駐は勤務しやすい働き方です。
しかし、案件によって雇用の安定が左右されるので、比較的長く勤めるのは難しいでしょう。
「テスト」「製造(コーディング)」「運用・保守」の経験は十分に積めるチャンスがあります。
できるだけ若いうちに実績をつけて、自社開発企業に転職する入口としてはメリットがあります。
客先常駐SESのデメリット
現場が短期でかわる場合はスキルが伸びない
客先常駐は、現場が短期で変更することも多いです。
開発にはフェーズ(工程)があり求められる技術レベルが変わりますよね。
スキルの低いエンジニアは担当可能なフェーズが少なく、長くプロジェクトに在籍することができません。
例えば、一人称でプログラミングができないエンジニアはテストまでは担当できても、開発フェーズに入って活躍するのは難しいですよね。
結果、職場が短期で変わり人間関係もゼロから構築する必要があります。
仕事も職場ごとにあるツールの使い方もイチから覚えなくてはいけません。
常に常駐先から評価されるのでストレスが溜まる
客先は契約更新の都合上、エンジニアを評価しなくてはいけません。
仕事を今後も任せていくか否かを見極めています。
そんなこともあり、常に監視されている気分でストレスが溜まります。
「今の報告まずかったかなぁ?」
「もう少し、資料の表現を変えるべきだった。」
気にしないようにしても、過剰なくらい意識してしまいます。
客先で働いていると、心が休まる瞬間が少ないです。
単独配属の場合、相談できる相手がいないから余計に辛いです。
勤怠などの業務報告がややこしい
勤怠や日報は、自社と客先の両方に提出する必要があります。
報告方法やフォーマットもそれぞれ異なるため、非常に複雑で面倒くさいです。
どちらかの勤怠を入力し忘れて、月末に大慌てということもあります。
小さなことですが、立派なデメリットです。

【客先常駐がやばい・地獄】は会社や人にもよる
客先常駐がやばい・地獄と言われているのは、ブラック企業が多いからもあるでしょう。
企業がエンジニアを社員として雇用して、人材を育成する視点を持っていれば叩かれることはありません。
しかし、客先常駐は雇用の安定性では確実に劣ります。
内勤に移れる可能性も100%ではありません。
その辺りを良いとするか否かは、あなたの捉え方でしょう。
今のあなたの状況に合った企業であれば、客先常駐はやばい・地獄にはなりません。逆も同じです。
給料が安くても、エンジニアの経験が積みたいだけなら地獄ではありませんよね。
プログラミングの経験さえ積めれば良いなら、待遇を気にする必要もありません。
給料面や雇用の安定性を最重視するなら、やばい・地獄かもしれません。
ただし、これだけは確実に言えます。
新卒や学習経験すらない、スキルが低い未経験者は客先常駐を避けた方が良いでしょう。
理由はこれまでの流れから分かると思います。